長年、当社に駐車場の管理をお任せいただいているA様。ある日、A様から将来的な相続対策を考え、複数の相続人にうまく相続ができるよう、管理を解約した上で駐車場を売却したいとのご相談が寄せられました。それに伴い、駐車場をご契約いただいている方に、解約の通知と車両の移動をお願いすることとなりました。
苔むした車
その中の1人、ご契約者B様の車両は、以前から心配していた一台でした。
その理由はひと目見ればすぐに分かる、車両の外装。蔦が這い、苔までむしていて、放置されているのではと思うほどに使用感もありません。まるで映画のワンシーンのようです。
駐車場の契約は1年毎に更新を迎えます。その度、B様にはお車の状況を心配している旨も手紙で連絡をしていました。しかし、B様のお返事は毎回「使っています」とのことでした。
更新はしっかりされていましたし、車両にはナンバープレートも取り付けてあったので、当社からもそれ以上のことを追求することはありませんでした。
そして、オーナーA様からの売却のご相談を頂いたことで、B様にも車両の移動のお願いをする必要が出てきました。
まずはB様にお手紙をお送りしました。しかし、ご連絡はありません。訪問やお手紙を繰り返し送るも、一向に返事をいただけることはなく、ついに音信不通となってしまったのです…。
ご親族からのご連絡
とはいえ当社にて勝手に車両を移動するわけにもいかず、どうすべきかと懸念していた頃、1本の連絡が入りました。それはB様のご親族であるC様からでした。そこで、初めてB様が2ヶ月前にご逝去されていた事実が発覚したのです。
C様はB様の元へ度々訪れていたようで、B様がお亡くなりになったあと、C様がポストに投函されていた手紙を発見し、当社にご連絡をしてくださったのでした。
C様に、改めて今回の経緯をご説明し、車を処分していただくか、当社がご案内する近隣の駐車場をお借りいただくなどのかたちで、B様の車両を移動できないかとご相談をさせていただきました。
しかし、これにはC様も困惑された様子です。C様は連帯保証人ではないので、そのような義務を負わせることもできません。 対応のしようがない状況になってしまいました。
このままでは駐車場の売却が立ち行かず、A様にもご迷惑をおかけすることになってしまいます。A様へ現状のご説明、顧問弁護士にも相談を重ね、最終的には、新しい駐車場の契約金をA様にご負担いただき、お車はC様のご協力にて別の駐車場に移動していただくことで話がまとまりました。
そしてすべての車両の移動が完了し、駐車場の売却も無事に終えられたのでした。
まとめ
『「正当な理由」が無ければ立ち退きを要求できない』としている借地借家法が絡む居宅と比較すれば、駐車場の立ち退き交渉は比較的トラブルも少なく明け渡しが完了します。
しかしながら今回の場合は、想定外の出来事により一筋縄ではいかない対応が要された案件となりました。